きりまんじゃーろでうありむ。

2018年1月〜2020年1月、青年海外協力隊でタンザニアへ。キリマンジャロ山の麓街であるモシ市で、小学校の先生として派遣されます。

タンザニアにおける体罰

体罰って何故いけないのでしょうか??

・痛いからだめ?

・心に傷を与えるからだめ?

服従心や恐怖心を煽るからだめ?

・萎縮してしまうからだめ?

エスカレートしていくからだめ?

・内発的動機を削ぐからだめ?

 

タンザニアにおける体罰のことを、ここでは「チャパ」と記します。

体罰」と聞くと日本での出来事をイメージし、

偏見が伴う可能性があるからです。

少しでもフレッシュな状態で考えてもらいたいのです。

 

タンザニアにいると、毎日チャパを目撃します。

ただ、それには若干のルールがあるように思えるのです。

チャパには「木の棒」を使用し、指先もしくはお尻めがけて

文字通り振りかぶります。回数は3回。

本赴任して2週間が経ちましたが、

上記から外れたチャパを一度も見ていません。

タンザニアの教師は教育実習生を含めて、

このチャパ棒を持ち歩いています。

職員室には常に何本かのチャパ棒が転がっています。

安心してください。当然僕は持っていません。

すると、こんな質問が飛んでくるのです。

A「なぜチャパ棒持たないんだ?」

僕「俺は持たないし、絶対チャパしない。」

B「まじ?なんで?日本人はみんなそうか?」

僕「いや。昔は多くの先生が体罰してたよ。

でも、今はしてはいけない。それが普通なんだ。

今でも体罰してる先生はいる。でも見つかったら罰せられる。

職を失う。体罰したいと思ってる人もいると思うけど、

今の日本はできない環境にあるんだよ。」

A「おいおい待て待て。じゃあどうやって指導するんだ?」

B「その場で指導しないんじゃないか?」

僕「いや。その場で言葉で指導する。」

A「子どもはそれでわかるのか?」

僕「いや、時間がかかることが多いな。

例え”ごめんなさい"と言ってもわかってないこともよくある。

だから分かるまで複数回指導(説得)する。」

A/B「時間がかかる指導なんて意味ないだろ!

その場で正すことが指導ってもんだ!」

僕「ん?じゃあタンザニア人は他のことと関連して叱ることはないのか?

例えば,遅刻した児童に対して"だから成績が悪いんだ。"って。」

A「ないな。遅刻は遅刻でチャパ。成績は成績でチャパ。

悪いことにはそれぞれ罰がある。そうだろ?」
B「だな。"その場で"ってのが大事だ。チャパが一番効く。」

僕ら日本人が考えている体罰問題とは少し違うようですね。

「鉄は熱いうちに打て」ということでしょうか。

「時間」に重きを置いた時、確かに体罰は有効な手段なのかもしれません。

恐怖心を煽り萎縮させることで、その後の行動は変わるでしょう。

 

現在の世界(先進国)の常識が、「体罰=悪」となっているだけで

この世界(タンザニア)では常識ではないのです。

(一応大統領は、チャパ禁止としています。)

常識や正義、価値などの基準は、時代・文化・場所によって揺れ動きます。

逆にここの人たちからすれば、僕が常識知らず、異端児なのです。

僕はここの常識を変えるつもりはありません。

と言うより、変えることは”できません”。

 

おいおい、お前は日本人だろ。教育者だろ。と、思ったあなたに質問です。

 

「問題行動を起こした児童生徒に対して、”いけないこと”認識させ”もう、しばらくはしない”と思わせるための、万人に通用する指導方法を教えてください。」

 

僕に対してではなく、ここの現地の人が納得する説明をしてください。

バカにしているわけではありませんが、

研究や論文で…より文化的だから…に類するものは通用しません。

「だってチャパすれば、わかるじゃん。そう言うものじゃん」と言う考えです。

「寄せ箸」「迷い箸」…何故マナー違反なのでしょうか?

答えにくいですよね。我々が日本人だから、と言うのが答えでしょうか。

マナーが悪いと感じるのは世界中で私たちくらいでしょう。

 

 

これを踏まえてもう一度考えて見てください。

相手の常識に訴えることって本当に難しいのです。


ここにいると、僕の普通は普通ではありません。

洗濯物(当然手洗い)を干す時、早く乾くようにと絞ると「なんで?」と聞かれます。

僕の隣人はビチョビチョのまま干すのです。

今までの当たり前の行いを、考えを改めて考え直す機会をもらっています。

同じことの繰り返し単調な毎日ですが。

その中でも毎日が何かしらの発見があります。

今の所、まだ新鮮です。少しずつタンザニアに染まっています。

僕はタンザニア人が基本的には好きです。優しいし、よく笑うし。

同じこと聞くし、話が長いし、面倒臭いところもあるけどね。

彼らのお陰で僕は、日本の良さ・悪さ・見習うべき点を感じることができます。

外を知るって、世界を広げることって、大切なことです。

 

 


少しずるいですが、最後に補足させてください。

チャパを受けると泣き出す子どもも当然います。

そんな子に「大丈夫?」と聞くと、「うん!平気!!だって悪いことしたもん。」

と返ってきます。そして、心の心配ですが彼らはチャパされた後に

何事もなかったかのような満面の笑みを見せるのです。

やり返そうとする子どもどころか、チャパされて怒る子どもすらいません。

慣れなのでしょうか。考え方の違いなのでしょうか。

このチャパが当たり前の環境に置かれていると、

チャパから抜け出すことは難しいかもしれませんね。

僕は、何があってもチャパしませんが。意地でです。

(幸い僕の任地には、感情任せに理不尽にチャパする教師はいません。他の学校にはいるかもしれませんが)